| キャストラウエスタンノワール アンカー財団編 第5話 サヤカ・“ロックオン”・プリンスト(姫路さやか) グリーンリーフの宿 「うぉーっ!」 大きな叫び声をあげてさやかがベッドから跳ね起きた。 下着だけでベッドに寝かされていたが、全身びっしょりと汗をかいて、その下着から肌が透けて見えていた。 「はぁ、はぁ、はぁ・・・」 背中で息をしながら周りを見渡した。 「痛った・・・」 さやかは後頭部を押さえた。そこには蓮美に食らった後頭部への一撃で腫れたコブが残っていた。 「まだもう少し頭は冷やしておきますね。」 ベッドの隣には少女が一人、濡れタオルを絞っていた。 そしてその横には涼子が立っていた。 「おはよう・・・ってももう夜だけどな。」 「ここは・・・?」 「グリーンリーフの宿さ。こっちの娘さんが・・・」 涼子はそう言いながら少女の方を見ると少女が続いた。 「私は、マイ・グリーンリーフ(若菜 麻衣)です。この店の店主 グローバル・グリーンリーフ(若菜 世界)の娘です。詳しい話は、このあと父を交えて、食事をしながらしますので、着替えられたら食堂にお集まりください。」 そう言って彼女は部屋を出た。 「さぁ、着替えてメシにするか!と言いたいところだが、さやか、お前、あのブレンダと何かあるな。この旅の前からおかしいぜ。メシの前に聞かせろや。」 そう言って、椅子の反対側から座り、背もたれの部分に両肘をついた。 「ああ、話すよ。今回は私の過去の精算もあるからな・・・」 サヤカの回想 8年ほど前の話だ。私は都会に憧れ、親元を離れて旅芸人の一座とともにリバータウンを目指して旅をしていた。 まぁその旅芸人っていうのは表の顔で裏は殺し屋。聞こえは賞金稼ぎより性質(たち)が悪いが、その頭領がしっかりした大人でね。筋の通った仕事しか受けない頑固者だった。ライフルの技術もナイフやロープの使い方も交渉の仕方も生きていくために必要なものはすべて教わった。親と折り合いがつかず飛び出した私には親みたいな存在だった。いや親よりも大きかったかな。彼は歳も若くまだ30代前半だったと思うが・・・思春期の私はほのかな恋ごろさえ抱いていたからだ。 14歳の小娘だった私は、女として見てもらえず、彼にとって娘のような存在だったと思う。また妻のようなパートナーの女性と仲良く過ごしていた。 それだけをみると本当にここが殺人集団なのかと思うほどの温もりさえ感じた。 そして、その集団は極悪人しか的にしなかった。表の顔は実業者でも裏では麻薬の密売人などの極悪人などの悪党しか手にかけなかった。しかも賞金を稼ぐわけでもなく単なる正義感からの行動だった。 まぁ今思うとそういうのが一番厄介で危ないと思うが、青臭い私はそんな正義感にも酔いしれていた。 しかし、私たちが殺す的の表向きの顔は一般市民。いつしか足が付き連邦政府から追われる羽目になった。そして、的にかけた男の一人が軍部に資金を提供していたので連邦政府とは別に軍部にも狙われることになった。 逃避行が続く中、うまく身分を隠して宿泊できる宿が見つかった。 旅の一座はそこをアジトにすることにした。 たまたま私は脚をヘビにかまれ、みんなと宿に行く前に町の医者に立ち寄った。 これがなかったら私は今ここにいない。 治療が終わり、宿に帰ってみると・・・旅の一座は大通りに連れ出されていた。 実は、宿のものすべてが身分を隠した軍人。 私は向かえの酒場の柱の陰からその様子をうかがった。 頭領は最後までシラを切ろうとしていた。 しかし、その部隊を率いていた女、そうブレンダはサーベルで仲間たちを殺していった。 「これでもシラを切るのか!」 そう言って頭領の隣いる若い男の胸を一突きした。 彼女は何かにとりつかれているようにも思えた。何か、追い込まれているような鬼気迫るものを感じた。 頭領はそれを見てすべてを認め、自分の死罪と引き換えに仲間、とりわけ未成年者と女性の仲間の減刑を求めた。 そして、私には消せない罪が残った。 そこにいる全員が逮捕されたが、軍部もバカではない。14歳の少女が一人逮捕者から漏れていることに気が付いていた。そして、私と間違われ逮捕されたのはみなしごで町の浮浪者の14歳の少女だった。 彼女も頭領も仲間であることを否定したが、背格好が私とほぼ同じで、さらに彼女にとって不幸だったのは、私が殺しの際、残した足型と彼女の足型がぴったりとはまってしまったのだ。これが決め手となり、彼女の一座のものと確定された。 そして、旅の一座は公開処刑でギロチンにかけられた。頭領が求めた減刑もなく、全員がギロチンにかけられた。それを執行したのはブレンダ自らだった。誰もが嫌がる死刑執行を率先してあの女は買って出たのだ。 私はその公開処刑の場に出向いた。何かできるのではないか、仲間を助けられるのではないか、14歳の小娘は中途半端な正義感、いや罪悪感からの逃避から処刑場へ出向いた。 しかし、処刑を前にして私の足はガクガク震えるだけで、前に踏み出すことさえできなかった。 次々に仲間が処刑されていった。 そして、その少女の処刑の順番がきた。彼女はすでに精神が崩壊していた。 私はまともに見られず、建物の柱の陰にしがみつくようにその処刑を左目で覗き込んだ、その時、ギロチン台に首を乗せた彼女がギラっとした眼差でこちらを見た。柱から覗き込んだ私の左目は彼女のその目線を捉えた。 私は全身に悪寒が走った。いや悪寒という生易しいものではなかった。猛烈な吐き気とめまいがした。そして、次の瞬間、彼女の首にギロチンが落ちてきたが、その時、私の左目の視界が消えた。 彼女と目があった左目は完全に暗闇に閉ざされた。 私はガタガタと震え、その闇の中、自分自身が生きているのか死んでいるのか分からなかった。 しばらくして・・・実際は数秒だと思うが・・・私は失禁していることに気付いた。股間が熱くなり、その温もりが太ももを伝う感覚を感じた。 私は見える方の右目で俯(うつむ)くと、股間にはシミが広がり、小便が漏れ出していた。その小便の温もりがふとともに伝わったかと思うと、やがて地面に大きな水たまりを作っていった。 恥ずかしい話だが、小便の温もりによって、私は冷静さを取り戻したよ。 グリーンリーフの宿 客室 「しかし・・・」 涼子が何か言いかけたが、さやかはそれを遮るようにつづけた。 「そうだよ、逆恨みだよな。ブレンダは任務を遂行しただけだ。許せないのは自分自身なんだ。あの少女の顔が、あの最後の瞳が、見えなくなった左目からひと時も離れない。だから、ブレンダとの対決は・・・」 「あのな、俺たちは賞金稼ぎだ? 私怨で人を殺すのはやめな。今回の仕事もアンカー財団から金が出なければ俺は降りるぜ。金が出ない時に、人をやるのは借りがあるときだけだ。今のお前は私怨で動いている、冷静になれ!」 涼子がさやかに怒鳴った。 続く |

